夕方に相談記録を整理していると、「同じ手口」のメモが増えていきます。ロマンス詐欺では、とくに入口の形がよく似ています。知らない相手からメッセージが届く。やり取りの場所がLINEへ移る。会ったことのないまま、投資や送金の話が出てきます。
これは窓口の感覚だけではありません。警察庁の令和8年上半期の統計では、当初接触の89.8%がダイレクトメッセージでした。年代別では50代が755件で最多です。50代と60代を合わせると、件数の53.6%、被害額の62.4%を占めます。
警察庁の特殊詐欺対策ページは、SNS型ロマンス詐欺を次のように説明しています。SNSやマッチングアプリで知り合った相手が、直接会わないまま恋愛感情や親近感を抱かせ、金銭等をだまし取る詐欺です。警察庁が2026年9月4日に公表した暫定値では、2026年1月〜7月末の認知件数は3,037件、被害額は293.2億円でした。
5つのサインを照らし合わせる
- 【確認】会ったことのない相手から、お金の話が出ている
- 【確認】知り合って間もなく、LINEへ移るよう求められた
- 【確認】写真や通話で親しくなり、本人だと受け止めている
- 【確認】勧められたサイトで、利益が出ているように見える
- 【確認】荷物の手数料や旅費など、名目のある送金を頼まれた
警察庁は、警告サインが一つでもあれば、送金前に警察へ相談するよう呼びかけています。以下、項目ごとに理由を確認します。
お金の話が出た時期を確認する
【要注意】実際に会ったことのない相手から、投資、結婚費用、旅費、仕事の立替えなどの話が出る。これが早い段階の警戒ポイントです。
警察庁は典型的な誘導文句として、「2人の将来のために投資しよう」「あなたと結婚するためにお金が必要」を挙げています。恋愛の言葉とお金の話が、同じ流れの中で結びつきます。窓口ではこう確認します。「その方と、実際に会ったことはありますか」。
LINEへ移った経緯を確認する
【要注意】マッチングアプリなどで知り合って早い段階で、LINEへの移動を求められる。警察庁が示す警告サインの一つです。
| 項目 | 認知件数に占める割合 |
|---|---|
| マッチングアプリ | 30 |
| 19.4 | |
| 17.9 |
上半期の当初接触ツールは、マッチングアプリが30.0%、Instagramが19.4%、Facebookが17.9%でした。入口のサービスは分かれています。一方で、被害時の連絡ツールはLINEが93.4%を占めました。移動を求められた日と、そのときの文面を控えておきます。
通話や写真の相手を確かめ直す
【要注意】SNSの公開写真、翻訳アプリ、生成AIを使えば、他人になりすますことができます。チャットや電話、ビデオ通話で親しくなっても、相手が本人とは限りません。
顔を見て話せたことは、安心材料になりやすいものです。ただ、直接会ったことのない相手からお金を求められた場合、本人確認だけで安全とは判断できません。
利益の表示と出金の条件を確認する
【要注意】投資型では、最初は利益が出たように表示して信用させます。その後に大きな入金を促し、出金時には手数料や税金の名目で追加送金を求めます。支払うと、連絡が取れなくなる手口です。
金融庁の注意喚起では、LINEグループ内の複数のアカウントが成功例を装い、個人名義の口座へ入金を促す例も示されています。
【確認】勧誘する業者が、暗号資産交換業者や金融商品取引業者として登録されているかを、金融庁の登録業者検索で調べます。登録の有無と相手の説明が合わなければ、送金を止める判断材料になります。
以前、「大手のグループ会社」という説明を疑わず、確認が一日遅れた案件がありました。説明が立派でも、照合の手順は省けません。登録の調べ方と契約条件の読み方は、投資詐欺の手口と契約前の登録確認をまとめた記事で扱っています。
送金を頼まれた名目を書き出す
【要注意】国民生活センターは、海外の相手から荷物の受取りを頼まれ、通関料や受取人払いの料金を請求される類型を紹介しています。渡航費用や休暇取得費用を求める例もあります。
警察庁の例にも「会いたいから旅費を送って」「荷物を送るから手数料を払って」があります。名目は変わっても、会ったことのない相手への送金という形は共通しています。頼まれた名目と金額を、日付順に書き出します。
送金前に画面を保存する
- 相手のプロフィールと勧誘画面を保存する
- 業者名と登録番号を書き写す
- 入金先の名義を控える
- 出金の条件を読み、手数料や期限を書き出す
迷ったときの相談先を確認する
送金前の不安でも、すでに送金した後でも相談できます。
- 【相談先】最寄りの警察署
- 【相談先】金融庁 詐欺的な投資に関する相談ダイヤル:0570-050588(IP電話は03-6206-6066。電話は平日10時〜17時、ウェブ受付は24時間)
- 【相談先】消費者ホットライン:188
相談員1年目、相談者の話を途中で遮り、信頼を失ったことがあります。相手を思う気持ちと、お金の話は切り分けにくいものです。気持ちまで否定しなくてもよいのだと思います。送金だけを一度止めて、誰かに話してみる。その順番もあるのではないでしょうか。